空き地の隅で空っぽの空き瓶が空を見上げた日 上演台本

上演時間 約60分

登場人物 9人

男2男1#$▲□〇空瓶

何もない小さな古民家の一室。

部屋の広さは八畳程だろうか。

決して広くはない小さな空間。

M1 何かが崩れる音

瓶がやってくる。

瓶なにやら遠くの方に向かって手をふったり、足元を気にしたりしている。壁を触ったりしゃがんだりしている。

男1がやってくる。

男1 あの、ここにありませんでしたか?

瓶  えっ?

男1 確かにここに置いてたんです。

瓶  すみません…わからないんです。

男1 一つ一つはそんなに重たくないんです 

   けど、全部合わせると結構な重さに

   なって。

瓶  それなんなんですか…?

男1 それは…ちょっと…。あのカバンに

   入ってるんです。

瓶  カバン…なんですか?中身は?

男1 とにかく見つからないと困るんです。

瓶  そういわれても…

男1 ほかに誰も来ませんでしたか?

瓶  誰も。私以外にですか?

男1 どうしてここにいるんですか。

瓶  どうしてって…それよりあなたは誰な

   んですか?

男1 僕が誰かなんて、今関係ないじゃない

   ですか。

瓶  関係ないことはないと思います。ここ

   がどこかわかってますか?私の家で、

   私の部屋ですよ。

男1 ここって…空き家じゃないんですか?

瓶  空き家…?いつからですか…?

男1 僕がこの町に来た時にはもう。

瓶  えっ?いつからここに?

男1 3か月ぐらい前です。

瓶  この町に来た目的は?

男1 探し物です。

瓶  カバンを探すために?

男1 カバンだけじゃないんですけど…

瓶  他に何を?

男1 それはちょっと…

瓶  もしかしたら私、あなたの探してるも

   のを知っているかも知れませんよ?

男1 ここにあったにはずのカバンも知らな

   かったのに。何を知ってるんですか?

瓶  カバンの中身は何なのか教えてくれま

   せんか?

男1 ここにカバンはなかったんですよね?

瓶  どんなカバンですか?

男1 そんなに大きいカバンじゃないんです。

瓶  色は?

男1 わかりません。

瓶  自分が探してるものの事を全然把握し

   てないじゃないですか。

男1 僕のカバンじゃないんです。

瓶  誰のカバンなんですか?え?人のカバ

   ンをどうしてあなたが?

男1 中身は僕のなんです。

瓶  あなたの何なんですか?

男1 もう一度探してきます。

瓶  ちょっと。

男1、どこかへ立ち去っていく。

男2がやってくる

瓶  誰ですか?

男2 広い場所だ。

瓶  あなたも勝手に入ってきたんですか?

男2 勝手に?どうして?

瓶  ここは私の部屋なんです。

男2 そうなんですか…。広いですね。

瓶  何と比べて広いんですか?

男2 何かと正確に比べた上で出した結論

   じゃないとまずいんですか。

瓶  そういうわけじゃありませんが。ここ

   はそんなに広い場所じゃないので。

男2 わかってますよ。僕が住んでいる場所

   よりは広いんです。それで父さんはこ

   こに?

瓶  父さん?あなたのお父さんですか?

男2 ここにいるって母さんが。

瓶  ここには私たち以外誰もいませんけど。

男2 わかってますよ。

瓶  え?

男2 肉体はここに存在していない。でも、

   魂はきっとここに存在してるんです。

   僕は昔ここで父さんと暮らしてたんで

   す。

瓶  それは幽霊的な何かと言う事ですか?

男2 そうかもしれません。あそこに空き地

   があったのを知ってますか?

瓶  ええ、確かに空き地がありました。

男2 僕が小さい時あそこで父さんと母さん

   とよく一緒に遊んだんです。今思えば

   とても幸せな時間でした。

瓶  そうですか。

男2 でも、いつの間にか父さんはいなく

   なってしまったんです。

瓶  事故か何かですか?

男2 違います。本当に突然いなくなったん

   です。

瓶  警察には?

男2 行きました。でも、警察によると家出

   だそうです。事件性もなかったんです

   ぐに捜索は打ち切られました。年間9

   万件も行方不明届けが受理されるそう

   で、父さんを探すことはできないと言

   われました。

瓶  だからあなたが探している?

男2 そうです。もしかしたら、もう亡く

   なっているかもしれません。でも、も

   し生きてるならもう一度会って話した

   いんです。

瓶  どんなお父さんだったんですか?

男2 真面目な人でした。学校の先生をやっ

   てたんです。生徒にも保護者にも尊敬

   される、自慢の父親だったんです。

瓶  そうですか。

男2 どうしていなくなってしまったのか、

   僕たち家族のせいなのか。それとも他

   に理由がそれだけでもいいから知りた

   いんです。

瓶  どうしてここに?

男2 最後の目撃情報がここだったんです。

   でも、どうやらここにもいないような

   ので、空き地を見てきます。

瓶  見つかるといいですね。

男2 そうですね。ありがとうございます。

男2、どこかへいってしまう。

〇がやってくる

〇  このあたりも随分変わりましたね。

瓶  えっ?誰ですか?

〇  でも、ここだけは変わらない。

瓶  前から知ってるんですか?ここの事を。

〇  昔、ここに住んでたんです。

瓶  そうだったんですか。でも今は私が…

〇  だから迷わないと思ったんですけど。

瓶  この辺りの様子が変わってしまった?

〇  そうなんです。びっくりしました。別

   の町になってしまったのかと。

瓶  別の町…?。

〇  そうですね。

瓶  どうしてここに?

〇  待ち合わせをしてるんです。

瓶  どうしてここなんですか?

〇  ここが私たちの始まりの場所なんです。

瓶  それでも、もっとわかりやすい場所が

   あったと思うんですけど。

〇  ここが一番記憶に残ってるんです。私

   もあの人も。

瓶  そうですか。

〇  でも、この様子だとあの人も随分迷っ

   てるのかもしれません。

瓶  来なかったらどうしますか?

〇  来なかったら、来るまで待ちます。

瓶  いつまで?

〇  いつまででも。あなたはどうしてここ

   に?

瓶  私も誰かを待ってるのかもしれません。

〇  同じですね。

瓶  ええ、でも、私の場合来るかどうかわ

   からないんです。

〇  来なかったらどうしますか?

瓶  わかりません。

〇  どれだけ待ってもこなかったら、自分

   が納得するまで待てばいいんです。

瓶  どんな人なんですか?

〇  優しい人だと思います。でも…

瓶  でも?

〇  優しすぎるんだと思います。なんでも

   そうじゃないですか?過ぎるのは良く

   ないって。

瓶  あなたの事大切に思ってるからじゃな

   いですか。

〇  大切に思い過ぎてる。

瓶  何がいけないんですか?

〇  自立できなくなる。

瓶  二人で生きていけばいいじゃないですか。

〇  二人でいられる間はそれでいいと思い

   ます。

瓶  …

〇  片方でも欠けてしまったら?残った一

   人はどうすればいいんですか?

瓶  一人じゃ生きていけない。

〇  それの何がいけないんですか。

瓶  私みたいになってしまうんです。

〇  あなたみたいに?

瓶  ずっと一人でその人を待ってしまう。

〇  あの人はちゃんと来ます。

瓶  私もそうだと思っていました。でも、

   いまだに私が待ってる人はここに来な

   いんです。

〇  あなたおかしいですよ。ずっとここで

   待ってるのに、どうしてこの町の事何

   も知らないんですか?

瓶  ここに戻ってきたのは最近なんです。

〇  どうしてここに帰ってきたんですか?

$と#がやってくる。

懐中電灯orスマホのライトを手に。

(ここで少し照明が暗くなるとうれしい。)

$  誰かいる?

#  やめて、怖いこと言うのは。

$  誰もいないよ。

#  わかってるよ。いるわけないじゃん。

$  それはわからないけど。

#  やめてって。

$  嘘だって、誰もいないよ。

#  もう帰ろうよ。

$  来たばっかりだよ?早くない?

#  だって見るからになんか出そうじゃん。

$  それはお化け的な?

#  うん、ろくろっくびとかキューちゃん

   とか。

$  あんたのお化けのイメージ、かなり 

   偏ってるね。

#  あかなめとか?

$  妖怪じゃん。

#  いたら怖くない?

$  確かに怖いけど…

#  今なんか聞こえなかった?

$  えっ!?嘘…

#  小豆を洗ってる音がする…

$  ちょっとやめてよ…

#  妖怪小豆洗いだ…。

$  あんた水木しげる好きだね…

#  いてほしくないけどいたらちょっとわ

   くわくするよね。

$  一番怖いのは人間だよ。

#  えっ?

$  今ここに、私たちじゃない人間がいる

   のが一番怖い。

#  いるの?

$  やめて、それは怖いから。

#  それじゃあ、なんでここに来たの?

$  お金が必要だったじゃん。

#  それはそうだけど…。

$  何かお金になるものがあるかもしれな

   いでしょ?

#  誰も住んでない空き家に?

$  この辺はもう全部空き家だよ。

#  なんで?

$  人が住めなくなったから。

#  どうして?

$  あんた知らないの?

#  何が?

$  ここで何があったか。

#  知らないよ。

$  とにかく探して!私だってこんな所に 

   長くいたくないんだから。

#  普通に働いたほうがいいよ絶対。

$  ここまできてメソメソ言わないで。町

   に帰るお金もないんだから。

#  もしここに何かお金になるものがあっ

   たとして、どうやって町まで持ってる

   帰るの?

$  …歩いて。

#  また歩くの…?

$  うん。

#  もう本当にお金ないの?

$  ないよ。

#  5時間も歩くの?

$  それしかないじゃん。

#  しんどいよ。

$  そもそもお金があってもバスもないし

   電車も使えないし、タクシーもないん

   だから、歩くしかないの。

#  ……

$  ……

#  お腹空いた。

$  私も空いたよ。

#  本当に人が住んでたのかな。

$  うーん。誰かは住んでたと思う。

#  どんな人だったんだろ。

$  今それを考えるのやめとこ?

#  なんで?

$  なんかそれ考えちゃうとしんどくなる。

#  ごめん…。

$  ううん、大丈夫。

#  あっちの方探さない?

$  そうだね。

#と$はける。

(ここで明かりが少し戻るとうれしい。)

〇  さっきの人たちは誰ですか?

瓶  あなたの待ってる人では?

〇  ありません。

瓶  そうですよね。

〇  何をしに来たんですかね。こんな所に。

瓶  妖怪がいるとかなんとか…

〇  えっ?ここって妖怪ハウスなんです

   か?

瓶  鬼太郎も目玉親父もいません。

〇  ちょっとまって…

瓶  どうしました?

〇  小豆を洗っている音が…

瓶  聞こえません

〇  妖怪っていいですよね。

瓶  ちょっと何言ってるかわからないです。

〇  あの二人、こんなところに来なくても

   いいのに。そう思いませんか?

瓶  人が住めない町…ここにはもう誰も住

   んでないんですか…?

〇  でも、あなたはここに住んでるんです

   よね?

瓶  そうです…。人が住んでない町は町と

   呼べるんでしょうか…?

〇  町はいつでも町なんです。そこに人が

   いるかどうかは関係ないと思います。

がやってくる。寒そうに少し震えている。

  ここは?

瓶  家です。

  あなたの?

瓶  そうです。

  すみません、少し休ませてもらっても

   いいですか?

瓶  構いませんよ。あなたの待ってる人で

   すか?

〇  違います。何があったんですか?

  わかりません。突然の事だったんで。

   あ、それより、ここで女の子を見ませ

   んでしたか?小さな女の子なんですけ

   ど。

〇  小さな女の子はいませんでした。

  そうですか。

瓶  娘さんですか?

  ええ、そうです。

〇  何があったんですか。

  車を盗まれたんです。

瓶  どうして?

  町へ帰ってくる途中、高速道路のサー

   ビスエリアで、ほんの少しだけ、自販

   機に飲み物を買いに行ってたんです。

   車も娘も目の前にいました。

〇  車に鍵は?

  本当に、目の前だったんです。車を止

   めた場所から自販機まで、本当に少し

   の距離だったんです。

瓶  どうして。

  油断してました。根拠のない理由で。

   自分はそんなものに巻き込まれるわけ

   がないと思ってました。でも、突然巻

   き込まれて全てを失うんです。

〇  娘さんと車ごと盗まれたんですか。警

   察は?

  警察には行きました。そしてしばらく

   して車は見つかったんです。でも、娘

   は乗っていなかった。

瓶  犯人の手がかりは?

  警察が今、探してくれています。でも、

   娘はもう助からないだろうって言われ

   ました。自分のせいなんです。

瓶  まだわかりませんよ。簡単に諦めない

   でください。

  簡単に、諦めたと思わないでください。

瓶  すみません。

〇  とにかく今は休んでください。

  いえ、もう十分休ませてもらいました。

〇  これからどうするんですか?

  このあたりで目撃情報があったんです。

   だから、探してきます。

〇  一人で大丈夫ですか?

  これ以上関係のない人を巻き込むわけ

   にはいかないので。本当にありがとう

   ございます。

、何処かへ行ってしまう。

瓶  女の子、無事だといいですね。

〇  そうですね。ここには沢山の人がやっ

   てきますね。

瓶  どうしてなんでしょうか?

〇  みんなこの町に、この場所に思い入れ

   があるんだと思います。

瓶  でも、どうして…

〇  それじゃあなたはどうしてここにいる

   んですか?

瓶  大切な人と一緒にここにいたんです。

〇  その人は?

瓶  ……

がやってくる。

〇  あ!

  あ!

〇  やっと来た。

  ごめんごめん。迷っちゃって。

瓶  あなたが待ってる人ですか?

〇  待ち人来るとはこのことですね。よう

   やく来てくれました。

  そんなに待たした?

〇  待ったよ。待たせるほうはいつもそう。

瓶  でも、楽しそうに待ってましたよ。

  それならよかった。この辺り、随分変

   わりましたね。

瓶  ずっと同じままじゃいられませんから。

  何があったんですか?ここで。

瓶  私もここに帰ってきたばかりなんです。

〇  どうして帰ってきたんですか?

瓶  私にとってもこの場所は大切な場所なんです。

〇  そうですか。

  何となく、私たちと似ているのかもし

   れませんね。

瓶  あなた達はどうしてここに?

  時間がなくなったんです。

瓶  時間?

〇  病気になったんです。

  もう治らないと言われました。急にタ 

   イムリミットを告げられました。それ

   でもう一緒にいられないことを話した

   んです。そしたら私も一緒にって言わ

   れて、本当にどうしようかと思いまし

   た。私としては私だけでよかったんで

   す。まだまだ彼女には時間があります

   から。

〇  でも、そんなのおかしいじゃないです

   か?一人になるってことは私の時計が

   止まるっていう事なんです。だからそ

   の、一緒にって思ったんです。一緒に

   行こうって、そして最後に二人の始ま

   りの場所に行こうって。だから、その、

   ほんの少しだけ、力を強く入れて少し

   だけ痛かったと思うんですけど。意識

   がなくなる前に二人でここで待ち合わ

   せしようって言ったんです。

  先に行って待っていられると思ったん

   ですけど、どうも迷ってしまって。結

   局待たせてしまいました。

〇  でも、ちゃんと来てくれてよかった。

   約束は守ってくれた。

  最後に私たちはここにこれて本当によ

   かったと思います。

瓶  後悔はないんですか?他に方法はな

   かったんですか?

  これが最高の選択だったかはわかりま

   せん。でも、二人にとって最善の選択

   だったと思います。

〇  私たちはただ、肉体を失っただけなん

   です。身体を持つっていう縛りから解

   放されただけなんです。

  形が変わっても一緒にいる事はかわら

   ない。それが私たちの生きるという事

   なんだと思う。

瓶  二人にとって、新しい出発地点になる

   んですねここが。

  いつもここから始めるのが私たちに

   合ってるんだと思います。

〇  二人にとって大切な場所だから。

  さぁ、そろそろ行こうか。

〇  そうだね。

瓶  幸せになってください。

  ありがとう。ところで。

瓶  はい?

  君はいつまで傍観してるの?

瓶  えっ?

  よかったら私たちと一緒に行きませんか?

瓶  でも、私は…

〇  無理に誘ったらだめだよ。困ってる。

  そうだね。すみません忘れてください。

〇  それじゃ。

、〇、瓶はける。

瓶  ちょっと待ってください。

瓶、はける

$と#がやってくる。

$  どうしよう。

#  何もないね。

$  いきなりの出来事だったから、みんな

   大切な物とかを置いて行ってるって

   思ってたんだけど。

#  そんなことなかったね。

$  予想外だよ。

#  今更そんなこと言われても、絶対にい

   けるっていうから来たのに。

$  ごめん。

#  いいけど、それよりこれからどうし

   よっか。

$  帰るに帰れないしね。

#  お金もないし。

$  どうして私たちには何もないんだろう。

#  人はみんな平等なんていうけどそんな

   ことないんだよ。

$  まず親がいないっていうスタートから

   人生マイナスだよ。

#  それは本当にそう思う。

$  そりゃ施設が嫌だったわけじゃないけ

   どさ。

#  もうこの歳になると一人で生きていか

   ないといけないもんね。

$  ちゃんと大学卒業出来たらよかったん

   だけどなぁ…。

#  仕方がないよ…お金払えなくなったん

   だし。

$  奨学金貰っても、生活費と学費払って

   たらおお金なくなっちゃったもんね。

#  バイトいっぱいしないと大学生活続け

   れないし、でも、そうすると勉強する

   時間なくなるし。どうすればよかった

   んだろ。

$  どうしようもなかった。だからやめる

   しかなかった。まぁ、その結果こんな

   ことしてるんだけど。

#  やっぱり泥棒は良くないね。

$  人が住めない町だからバレないと思う

   んだけなぁ…。

#  そういう問題じゃなくて。

$  わかってるよ。いいアイデアだと思っ

   たんだけど。

#  墓暴きしてるみたいでいい気分じゃな

   いでしょ?実際、誰も住んでない家の 

   中でビビりまくってたじゃん。

$  だって、怖いじゃん!なんか出そうだ

   し…。

#  今日はここで寝るの?

$  だって、外は雨降ってるじゃん。

#  小雨だよ?

$  風邪ひくって。

#  でも、人の家だよ?

$  誰もいないし帰ってこないから。

#  そうだけど…。

$  電気付いたしいいじゃん。外真っ暗だ

   よ?そんなに嫌なら外で寝れば?

#  ここで寝るよ!そんなに怒らないで。

$  ごめん…お腹空いてるからかな、イラ

   イラしちゃって。

#  私もごめん…。

$  何か食べるもの、ないかなぁ。

#  あの。

$  何?

#  トイレ、一緒に行かない?

$  あ、うん。そうだね!

#と$はける。

男2がやってくる。疲れた様子。休んでいる。

そこへ男1がやってくる。

カバンを持っている

男1 見つかりました。

男2 え?何が?

男1 誰ですか?

男2 あなたこそ!

男1 この家の人ですか?

男2 違います。あなたはこの家の人?

男1 じゃありません。

男2 それじゃどうして?

男1 ここに置いてあったものを探してたん

   です。でも、それはここじゃない場所

   に置いてあったんです。

男2 それはどうして?

男1 流されてたんです。まさかあそこまで

   流されているとは思いませんでした。

男2 何処にあったんですか?

男1 ここの近くにある空き地にありました。

男2 え、そんなカバンなかったですよ?

男1 あなたも空き地にいたんですか?どう

   して?

男2 父親の行方を探してるんです。

男1 それでどうして空き地に?

男2 ここじゃない場所にいるのなら空き地だと

   思ったんです。

男1 そうだったんですか。手がかりは見つ

   かりましたか?

男2 残念ながら。

男1 そうでしたか。

男2 それでそのかばんは空き地のどこに?

男1 埋まってました。

男2 空き地に?

男1 そうです。

男2 よく見つけましたね。

男1 正直に言うと、僕が見つけたわけじゃ

   ないんです。空き地に人がいたんです。

   その人が見つけてくれたんです。

男2 どうしてその人はカバンを見つけられ

   たんですかね。

男1 わかりません。でも、これで一安心で

   す。

男2 カバンの中には何が入ってるんです

   か?

男1 気になりますか?

男2 気になりますね。

男1 わかりました。特別ですよ。

男1、カバンの中から人の腕を取り出す。そして投げる。

男1 実は全部は見つかってないんです。こ

   れは僕の右手なんです。左手も右足も

   左足も見つかってないんです。

男2 え、どういうことですか?

男1 どういう事だと思いますか?

男2 すみません僕にはわかりません。

男1 僕は失くした自分の身体を探してるん

   です。

男2 ……

男1 仲間に裏切られた上に、バラバラにさ

   れたんです。

男2 その、仲間は捕まったんですか?

男1 捕まってないんです。そもそも僕が死

   んだことも公にはなってなくて、いま

   だに行方不明扱いなんです。

男2 ちょっと待ってください。あなた死ん

   でるんですか?

男1 え、あなたは死んでないんですか?

男2 僕は、死んでるんですか?え、それ

   じゃあなたの右腕を見つけてくれた人

   も?

男1 そうだと思います。

男2 どうして死んだんだろ。

男1 覚えてないんですか?

男2 そうなんです。あなたは覚えているん

   ですか?その…死ぬ瞬間という物を。

男1 覚えてますよ。身体も心も痛かった。

   死ぬ瞬間。きっと時間としてはそんな

   に長くなかったと思うんですけど。体

   感時間は凄く長かった。それまでの人

   生の事が一気に頭の中で廻ったんです。

   走馬灯ですね。

男2 僕は気が付いたらここにいたんです。

   死ぬ瞬間の事を覚えてなくて…。

男1 いつか思い出しますよ。おススメはし 

   ませんが。

男2 あなたはどうやってここに?

男1 自分の身体を探しているうちにここに。

男2 それは死んでからという事ですか?

男1 生きてるときに自分の身体のパーツを

   探さないでしょ?

男2 確かに。

空がやってくる。

男1 あ、この人です。この人が見つけてく

   れたんです。

空  ここにいたんですか。

男1 まだ全部見つけてないんです。

空  もういいじゃないですか。

男1 どうして?

空  全部見つけたらどうするんですか?

男1 どうすればいいんでしょうか?

空  あなたが考えてわからない事は、私に

   はわかりません。ただもういいんじゃ

   ないですか?右腕が見つかったんです

   から。

男1 全部見つけないと。

空  もう終わりましょう。全部見つけても

   あなたが生き返るわけじゃありません。

男1 僕はどうすればいいんですか?

空  もう全部忘れましょう。そしてもうさ

   迷うのも終わりにしましょう。

男1 それはできません。

空  どうして?

男1 僕が一体何をしたって言うんですか?

空  何もしてないというんですか?

男1 少なくともバラバラにされる筋合いは

   なかったと思います。

空  それはその通りだと思います。

男1 あなたもしかして、身体の場所知って

   るんですか?

空  知っていますよ。

男1 どこにあるんですか?

空  海に沈んだものもあれば、焼かれてし

   まったものもあります。

男1 どうやって取り戻せばいいんですか?

空  辛うじて形が残っていたのがそれだけ

   だったんです。もう、諦めてください。

男1 そんな…

空  ずっと恨んで辛くないですか?

男1 忘れるほうがずっと辛いです。

空  あなたを裏切った仲間はもうこの世に 

   いません。あなただけがまだこの世界

   にいる。もういいんですよ。

男1 全部あいつのせいなんです。

空  二人とも後悔してました。

男1 後悔されたってどうしよもうないじゃない

   ですか。

空  彼女はここで亡くなったんです。あなたが

   殺されたすぐ後に。

男1 どうして?孝之と一緒じゃなかったんです

   か?

空  孝之は彼女を巻き込まないように車を盗ん

   で逃げたんです。

男1 それじゃどうして、僕の右腕が彼女のカバ

   ンに入ってるんですか?

空  彼女は孝之がちゃんと帰ってくるように右

   腕だけ自分のカバンに入れて隠してたんで

   す。

男1 でも、帰ってこなかった。

空  代わりに帰ってきたのはあなたでした。

男1 ……

空  彼女一人では耐えられなかったんです。

男1 そんなことは僕に関係ないじゃないですか。

空  あなたはどうして彼女のカバンに自分の腕

   が入ってることを知っていたんですか?

男1 この町に帰ってきたときに、彼女の友達に

   会ったんです。その子が、教えてくれたん

   です。

空  そうですか。彼女も孝之も幸せだったんで

   しょうか?

男1 少なくとも僕よりは幸せだったでしょう。

空  私にはみんな不幸に思えて仕方がない。

男1 僕はバラバラにされたんですよ?

空  二人の大切なものを奪ったんですから。

男1 それは…

空  あのお金は二人にとっては人生と同等だっ

   たんです。それをあなたが奪わなければ誰

   も不幸にならずに済んだんです。

男1 生きるためには仕方がなかったんです。

空  二人も同じです。

男1 孝之を…僕は…許さない。

男1成仏…?封印か…?

男2 あなたは一体。

空  何処にだっている存在なんです。

男2 さっきの人は何処に行ったんですか?

空  ようやく成仏できました。

男2 自分の身体を探すなんて変ですよね。

空  人の数だけ事情は存在するんです。

男2 あなたはどんな事情でここに?

空  私に事情はありません。やるべきこと

   をやるだけ。

男2 やるべきこと?僕も成仏させるんです

   か?

空  その方が良いのかもしれませんね。

男2 という事は僕はやっぱり死んでるんで 

   すね。

空  死ぬの定義を教えてください。

男2 死んだ人と話せることじゃないです

   か?生きてるときはそんなことできな

   かったし。

空  生きてる人の中に、そういう事ができ

   る人がいます。

男2 あなたも?

空  私もそうなります。

男2 生まれつきなんですか?

空  違います。ある日突然呼ばれたんです。

男2 呼ばれる?

空  声が聞こえたんです。いや、声という

   か詩に近かったのかもしれません。

男2 それから不思議な力を?

空  その詩を聞くまでは、原因がわからな

   い病気にずっとかかってたんです。不

   思議な力と呼べる物を貰ってようやく

   それが治ったんです。

男2 科学的に照明はできませんよね?その

   力って言うのは。

空  私の病気すら科学で治すことができな

   かったんですから。証明できるかでき

   ないかだけで物事を判断する事はでき

   ません。

男2 ここはなんなんですか?

空  人が住めなくなった町です。

男2 どうして?

空  空気が…汚れてしまった。

男2 空気…?

空  色々なもののバランスが崩れました。

男2 僕は昔この町に住んでたんです。

空  そうでしたか。

男2 父親を探しているんです。

空  ここにはいません。

男2 どうしてわかるんですか?

空  あなたのすぐ近くにいます。

男2 どういうことですか?

空  あなたはただ迷いんだだけなんです。

   ここに来るべきじゃないんです。まだ

   間に合います。あなたはここから帰れ

   る。

男2 僕に何が起こったんですか?

空  帰ればわかります。そこにお父さんと

   お母さんもいます。一歩間違えば手遅

   れでした。でもあなたは助かったんだ

   から帰りましょう。いつかはここに来

   ます。でも、それにはまだ早い。

男2 高い所から見えた景色を僕は覚えてい

   ます。そういうことだったんですね。

   ありがとうございました。

男2、帰る。

$と#が帰ってくる。

#  トイレ…電気付かなかったね。

$  怖すぎでしょ。

#  ちゃんと頑張り入道ホトトギスって三

   回唱えた?

$  え、何それ?

#  あんた知らないの?

$  知らないよ!

#  頑張り入道ホトトギスって三回唱える

   と、人の生首が落ちてくるの!

$  えっ!

#  あんた、唱えてないでしょ!私たちは

   ここに何しに来たの?

$  お金になるものを探しに来ただけで生

   首なんて探してないよ。

#  その生首を持って帰ると金になるの!

$  なにそれ…あんたの妖怪知識が怖い…

#  ちゃんと唱えたんだけど何も起きな

   かった。

空  それは大みそかにやらないと駄目なん

   ですよ。

#  え、誰?

空  こんばんは。

#  すみません。勝手に上がってしまって。

$  あの、すぐ出ますから。

空  外は雨が降ってます。だからここにい

   てください。

#  この家の人ですか?

空  違います。でも、外が明るくなったら

   この町から出ていってください。

$  でも、お金が…

空、財布を渡す。

空  使ってください。

#、恐る恐る中身を見る。

#  あの、こんなにも貰えません。

空  気にしないでください。これで少しは

   平等だと感じられますか?

$  何それ。

#  いいじゃん、貰っとこうよ。

$  あんな言い方ある?

#  でも、これで帰れるじゃん。

$  いらないよこんなお金。

#  落ち着いて。

空  どうしてそんなに怒ってるんですか?

$  別に、怒ってるわけじゃありません。

   これお返しします。

#  えっ!ちょっと!

$  いいの!他に何か見つければいいで

   しょ。

空  確かに、あなたの言う通りです。探せ

   ばお金になるものが見つかるかもしれ

   ません。でも。

$  なんですか?

空  この町にあるものは持ち帰らないほう

   がいい。

$  あなたに関係ありません。

空  そういう訳にはいかないので。この場

   所は私が管理しています。

#  早く帰りたいよ。

$  そんなの私もだよ。

#  じゃあ、貰おうよ。

$  でも…

がやってくる。

空  あなたもここにいたんですね。

  見つかりませんでした。

空  だからまださ迷ってる。

  自分のせいなんです。

$  誰と話してるんですか?

空  あの二人からあなたは見えていません。

   これがどういう事かわかりますか?

  わかりません。

空  あなたはもう死んでるんです。

  そんなことどうでもいいんです。

#  誰かいるんですか?

空  何を探しているんですか?

  娘を、探してる。

空  見てわかりませんか?

  え?

空  そこにいるじゃないですか。

  だって、まだ赤ちゃんだったんです

   よ?

空  あの事件が起きてからもう20年が

   たってるんです。

  そうだったのか。

空  それに彼女はちゃんと生きてる。だか

   らもういいんです。もうここから旅

   立っていいんです。

#  あの。

空  もう少しで終わります。

  そうか、彼女が。大きくなったな。

空  あなたのせいじゃないんです。

  もう私がいなくてもいいんですかね。

空  もうあなたに出来ることは何もありま

   せん。生きてる人に何かできるのは生

   きている人だけ。

  あなたは生きてるんですか?死んでる

   んですか?

空  生きてもいないし死んでもいません。

#  そこに誰かいるんですか?

空  はい。

  ちゃんと生きてるんだな。

空  あなたがここで留まる必要もありませ

   ん。

#  私の知ってる人ですか?

空  あなたのお父さんです。

#  え?

  ごめんな。俺のせいで。

#  なんていってるんですか。

空  何も言ってません。あなたの声も聞こ

   えていません。

  どうしてそんなウソを。

空  さっきも言いましたがあなたは彼女に

   何もすることがありません。

#  お父さんってどんな人?

  ずっとお前に謝りたかった。一緒に暮

   らしたかった。ごめんな…苦労かけて

   …

空  時間です。行きましょう。

  あと少しだけ…

空  もう時間です。

  頼む…。

空  20年、時間をあげたんです。

  5分でいいから…

空  終わりです。

  頑張って生きてくれ…幸せに…

成仏する。

#  お父さんは?

空  もういません。

#  どうして?

空  成仏しました。

#  お父さんと話したかった。

空  死んだ人と話してどうするんですか?

#  それは、わかりませんが。

空  だったら話さないほうがいいんです。

$  冷たいんじゃない?この人。

空  そうかもしれません。

$  話したことがない父親と話したいって

   思うのってそんなに変?

空  そんなことはないと思います。でも、

   無意味だと思いませんか?だって死ん

   でるんですよ。

$  それはそうだけど。

空  死んだ人はあなたに何もしてくれませ

   ん。生きていくには必要のないものな

   んです。

#  生きてる人だって私に何もしてくれな

   いよ!

空  何かをしてもらうのを受け身で待って

   るからです。人に頼って何かをしても

   らうのも才能です。

#  スタートラインが人と違うんです。

空  自分の不幸に酔わないでください。

#  酔ってなんか…

空  誰かと比べて、何がか足りないのをお

   父さんとお母さんがいないせいにしな

   いでください。

#  もういいです。いこ。

$  でも。

空  あなたのお父さんとお母さんはまだ生

   きてますよ。

$  えっ?どこで。

空  あとは自分で探してください。

#  生きてるんだ。よかったね。

$  でも、そんなのわかんないから。

空  探しに行かないんですか?

$  だって、そんなの本当かわかんないし

   …

#  気にしないでいいから。

$  違うってば。

#  いいの。

#、何処かへ行く。$後を追う。空、はける。

〇と□やってくる。その後瓶も

瓶  傍観してるってどういう事ですか?

  大した意味はないんだよ。ただ…

瓶  なんですか?

  君はどうやってここに?

瓶  あそこの空き地で落ちてたんです。

   隅っこで。そしたらある日誰かが拾っ

   てくれたんです。中身がない空き瓶に

   意味はあるんでしょうか?

  拾ってくれた人にとっては意味があっ

   たんだと思います。

瓶  でも、その人はどんどん弱っていって、

   気が付いた時にはもう。

〇  この部屋で?

瓶  そうです。私にはどうしようもできな

   かったんです。

  ただ見ていた。

瓶  他にどうしろと?

  助けようとしましたか?

瓶  私にそんな力はありません。

〇  その人はどうなったんですか?

瓶  この部屋で亡くなりました。そして私

   はあの人が亡くなった後しばらくして

   波に流されて、遠くをさ迷いました。

   長い時間がかかってようやくここに

   帰ってこれたんです。

  ここで何をするんですか?

瓶  いろんな人がやってきて、そしてどこ

   かへ旅立っていくのを眺めるんです。

〇  あなたはどこにもいかないんですか?

瓶  私にとって唯一の意味を持つのがこの

   場所なんです。だから私はずっとここ

   にいるんです。そしていつかあの人が

   ここに帰ってくるのを待つんです。あ

   なたが言ったように、私が納得するま

   でそうするつもりです。

〇  一人で大丈夫ですか?

瓶  もちろんです。私は傍観することし

   かできません。誰かを助けたり守った

   りすることはできません。ただここに

   いる事しかできないんです。

  それでいいんですか?

瓶  これでいいんだと思います。

  私が言いたかったのは、ただ見ているだけ

   は辛くないかってことだったんです。傍観

   することに耐えられないなら一緒に来てく

   れればいいなと思ったんです。

瓶  ありがとうございます。

〇  傍観するって言う言葉がよくなかったんだ

   よ。

  それは確かに。

〇  本当、そういうところが駄目なんですこの

   人。

瓶  そんなことありませんよ。でも、二人には

   二人の旅路がありますから。気持ちだけ受

   け取らせてください。

  わかりました。すみません、長々と。

瓶  いえいえ、いい旅を。

  ありがとう。それじゃそろそろ行こう

   か。

〇  そうですね。ありがとうございました。

〇と□成仏する。

空がやってくる

空  久しぶり。

瓶  久しぶりですね。

空  長い時間が経ちました。

瓶  そうですね。でも、まだまだ長い時間

   がかかる気がします。

空  今日も沢山の人がやってきました。生

   きてる人も死んでる人も。

瓶  迷って、さ迷ってる人が沢山いるんで

   すね。

空  そういう人が集まる場所なんです。

瓶  心霊スポットじゃないですか。

空  こういう場所は世界中にあるんです。

瓶  私は死んでるんですか?

空  生きてもいないし、死んでもいません。

瓶  私の存在って何なんですかね。

空  人じゃない物にも想いは宿るんです。

瓶  それって残酷ですよね。

空  どうして?

瓶  想いを持っても、私は何もできない

   じゃないですか。

空  生きてる人に何かを出来るのは生きて

   る人だけです。

瓶  ただ見てるだけがどれだけ辛いかあな

   たにわかりますか?

空  私にはわかりません。

瓶  あなたは生きてる人にも死んでる人に

   も何かをできるから。

空  その代わり、私は生きてる人にも死ん

   でる人にも、人じゃない物にも何も貰

   うことができません。

瓶  ……

空  あなたはあの人に沢山の物をもらった

   んじゃないですか?

瓶  でも…

空  それでいいんです。人は誰かに何かを

   あげたいと思うんです。そのためには

   貰ってくれる存在が必要なんです。

瓶  それでも、あの日…私に何かできるこ

   とが合ったら、あの人は死なずに済ん

   だのに。

空  あの人は自分で道を誤ったんです。ど

   んな理由があっても人が人を殺して幸

   せになることはありません。

瓶  それは…そうですね…

空  それに遅かれ早かれ、ここに住んでい

   てはもう…

瓶  どうして?

空  波が近くまで来たから。

瓶  そうですね。何もかもが無くなってし

   まいました。

空  いろんな場所からいろんなものが無く

   なって、空き地になってしまいました。

瓶  それは誰にも必要とされていない場所

   なんでしょうか?

空  今はまだ、誰も必要とできない場所。

   ここはもう人が住めない町だから。

瓶  いつか住めるようになるんでしょうか。

空  それこそ長い時間がかかります。

瓶  あなたはどうしてここに来たんですか。

空  ねじれてしまったものを元に戻すため

   に来ました。

瓶  さっきここにきた二人は生きてるんで

   すか?

空  生きてますよ。あの二人も迷い込んだ

   んです。でも、もう大丈夫だと思いま

   す。

瓶  それならよかったです。

空  また私は旅に出ます。

瓶  今度は何処へ?

空  西の方に行きます。

瓶  そうですか。

空  その前にあなたを元居た場所に戻そう

   と思います。

瓶  あの空き地ですね。

空  そうです。

瓶  わかりました。一人で大丈夫です。

空  また迎えに行きます。

瓶、はける。

空  空き地の隅に空っぽの空き瓶がありま

   した。中身は何もありませんでした。

   コーラの瓶じゃなくて、ビールの瓶で

   もなくて、あれは確かラムネの瓶でし

   た。太陽の光を反射して空を見上げて

   たんです。その姿がどうしても忘れら

   れませんでした。

空はける。

#と$がやってくる。

$  待ってよ。あの人が言ってることが本 

   当かどうかわかんないじゃん。そんな

   の信じないでよ。

#  嘘じゃなかったらどうする?

$  どうするって…どうもしないよ。

#  会いたいって思わない?

$  …思わないよ。

#  どうして?

$  だって私を捨てた人たちだよ?今更

   会ってどうすればいいの?

#  何か事情があったのかも。

$  どんな事情でも関係ないよ。

#  話してみないとわからないよ。

$  いいの!もう忘れて。

#  もしかして私に気を使ってない?

$  そんなことないよ。

#  じゃあどうして会いに行きたいって思

   わないの?

$  もしも本当にお父さんとお母さんが生

   きてたとしても、そこには私がいない

   生活が存在してるんだよ?今更会いに

   行っても迷惑じゃん。

#  ずるいなぁ。

$  何が?

#  傷つけるんだから。

$  なにそれ…?

#  私はもう傷付くこともできない。想像

   の中で記憶のない両親の顔を想像する

   ことしかできないんだから。声だって

   どんな声だったかもわからないのに。

   ずるいよ。

$  ちょっと待って、そもそもあの人の嘘

   かもしれないじゃん。

#  私は信じるよ。

$  それでもいいから怒らないでよ。

#  怒ってないよ。

$  本当に?

#  探しに行こうよ。

$  え?

#  まだ生きてるんならきっと見つかるよ。

   だから探しに行こう!

#、走り出す。

$  え、ちょっと待ってよ!

$、その後に続く